毎月届ける日本茶のお話し。今回は特別に室町時代から伝わる「くろばね茶」のお話しをおとどけします。
「くろばね茶」は栃木県大田原市須賀川地区、八溝山地のふところを流れる渓流の清らかな水で育てられてきました。この須賀川地区は室町時代から続く栃木県最古の茶産地。ただここ数十年は、高齢化や後継者不足などによって、茶畑の荒廃も目立つようになりました。そんな中、荒廃した耕作放棄地の有効利用と地域活性化を目的として、茶畑の誇りを取り戻すべく煎茶用の生茶葉を使い「紅茶」として復活させたのが「雲巌(うんがん)の静謐(せいひつ)」。須賀川地区の中心、臨済宗妙心寺派の名刹、雲巌寺の老大師より名づけられたこの名とともに、「くろばね茶」はその新たな歩みをはじめました。
2012年5月、地元の活性化に関心や興味を持っている住民や主婦の女性をはじめとする老若男女22名の有志で集まった人たちでやみぞあづまっぺ協議会が結成され、荒廃した茶畑の再生に向けてスタートしました。荒廃した茶畑を本来の姿に整備するには当初はなかなかの苦労もあったようです。茶刈機の使い方や施肥のタイミング等も技術的に確立していなかったこともあり、多くの時間がかかりました。出来上がった茶葉は茎が多く残り、それをひとつひとつ女性たちがピンセットで根気強く取り除きながらなんとか出荷したこともあったようです。その苦労もあってか5月中旬に春摘み茶(一番茶)、7月下旬に夏摘み茶(二番茶)、9月上旬に秋摘み茶(三番茶)と年3回収穫できるほどにまでなり、市内のホテルやカフェなどでも取り扱いが始まるほどの人気商品になっていきました。
やみぞあづまっぺ協議会の一員として、紅茶づくりを担うしげこさん、みちこさんのふたりは、古民家を改装した作業場でメンバーが集まって行われる週に一回の商品の製造作業が楽しくてしょうがないと口をそろえて話していました。グラム単位で茶葉を量りながらブレンドし、ひとつひとつティーバッグを作る作業は根気のいるものの、そこでのおしゃべりが楽しく、地域のつながりを生むことにもなっているようです。縁側カフェや茶摘み体験ツアーなど外からの人が訪れるイベントも、大切な人と人とのつながりが拡がるきっかけに。もともと伝統ある茶畑の復活を通じて、地域の横のつながりを作っていくことを目指していたやみぞあづまっぺ協議会。ここに暮らす人たちが大切に積み上げて作ってきたかけがえのない“場”こそが、まさに紅茶を通じて生まれた地域にとっての本当の財産かもしれません。
この「雲厳の静謐」。ひとつひとつ丁寧に摘み、揉んで発酵させ熟成させたこだわりの和紅茶に仕上がっています。熱心な研究と取り組みの賜物とも言える香り、やさしさ、旨味は、時間を忘れてゆっくり愉しみたい逸品に。淹れたての温かいうちは、紅茶の芳醇な香りが気持ちよく、湯温が冷めても、そのまろやかな旨味をしっかりと感じることができ、いつまでもその味わいが続く特別なお茶。ちょっとだけ日常の喧騒から離れて、自分の場所で、自分のペースで時間を過ごしたい、そんな時に絶好の一杯になってくれるでしょう。
味わい豊かなストレートティーに加えて、飲んだ後からほのかに香る「山椒」、からだがポカポカ温かくなる大田原の特産品「とうがらし」のフレーバーティーも取り揃えています。雲巌の静謐とともに、豊かなゆっくりとした時間をお愉しみください。
それでは、お茶とともに感じる色に満ちた生活を。Life is colourful.
雲巌の静謐についてはこちら
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